封筒の色にこだわり抜いた私の一通のラブレター

封筒の色にこだわり抜いてラブレターを出したことがあります。

私が若いころは、まだSNSなど存在していませんでした。
かろうじて携帯でメールを送ることはできたので、何か用件があるときはよくメールを利用していたのを思い出します。
ただし、ある内容に関してだけは、メールではなく手紙を使おうと心に決めていました。
その内容とは、いわゆるラブレターです。
特に私がこだわっていたのは、ラブレターの文面よりも、むしろ封筒の方でした。

何か気の利いた言い回しはないかと考えても、私にそんな文章力はありません。
しかし、それでもラブレターですからインパクトは欲しいわけです。
すると必然的に、私の興味は文面から封筒の方へと移っていきました。

私がとにかくこだわることにしたのは、封筒の色です。
色なんて大して重要ではないと思う方もいるかもしれませんが、私はそうは考えませんでした。
色は相手の無意識の部分に作用すると思っていましたし、受け取ったときの印象もずいぶん変わるはずだと考えていたからです。
ラブレターを渡そうと決心した後、最初に候補に挙げた封筒の色は白でした。
白色にはクリーンで誠実なイメージがありますし、相手に良い印象を持ってもらえるかもと思ったからです。
ですが、インパクトがある封筒になるのかというと、そういう意味ではどこか物足りません。
私はしばらく悩みましたが、最初の候補である白色の封筒をあきらめることにしました。

ただ、白色以外の候補がなかなか思い浮かびません。
青だとどこか冷たい印象を与えてしまうかもしれないし、だからといってピンクの封筒では、相手が引いてしまうかもしれないと感じます。
そして2日ほど考え抜いた末、私が決めた封筒の色は「茶色とピンクの中間色」でした。
これならピンクほど派手にもならないし、暖色系でどこか温かみのある雰囲気も伝えられそうだと思ったからです。

次に私は、文面を考え始めました。
しかし先ほども述べたように、私には高い文章力など備わってはいません。
どうにか相手の心に刺さる言葉を絞り出そうと努力しましたが、残念ながら最後まで出てきませんでした。
結局私がラブレターの中身に記した言葉は、「好きです。付き合ってください」のひと言だけになったのです。

意中の女性は幼馴染で、当時は私の家の目と鼻の先に自宅がありました。
私は自らの想いを込めた封筒を片手に持ち、彼女の自宅まで歩いて行ったことを、今でもよく覚えています。
そして郵便受けに封筒をそっと押し入れ、その後は逃げるようにして自宅まで走りました。

それからどれくらい時間が経ったでしょうか。
いつの間にか日は暮れ、時計の針は午前0時を回っていましたが、一向に眠れません。
気持ちを伝えることができたのはよかったのですが、やはり相手からのリアクションがないうちは不安でいっぱいでした。

翌日、仕事が休みだった私は、お昼過ぎになってようやくベッドから出ました。
いつの間にか眠っていたようですが、緊張のためか体の疲れは全く取れていません。
そしていつものように新聞を取りに玄関まで行くと、そこには新聞と共に封筒が一つ入っていました。
それは淡いピンク色の封筒で、表には私の名前が、そして裏には彼女の名前が記されていました。
私の胸は高鳴り、封筒を開けようとしましたが、指先が震えてなかなか上手くいきません。
やっとのことで中身を確認した私は、しばらくその場で固まっていました。
封筒の中にはたったひと言、「OK」とだけ書かれた便箋が入っていたのです。

人間にとって最も大切なのはもちろん中身だと思いますが、それは見た目をないがしろにしてもよいという意味ではありません。
誰でも第一印象は見た目になるはずですし、やはり見た目が良いに越したことはないからです。
これは、ラブレターでも同じことが言えると思います。
たとえ洒落た文面ではなくても、こだわり抜いた封筒を使ったラブレターを、彼女は受け入れてくれたのですから。

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